【IT×食】なぜ今フードテックが注目されているのか
近年、ITやクラウド、AI技術の発展によって、「~テック」と名の付くものが増えてきていることにお気づきでしょうか。
この「~テック」は、総称して「X-Tech(クロステック、エックステック)」と呼ばれています。
例えば、金融関連のサービスで使われる「フィンテック」、睡眠の改善や分析に活用できる「スリープテック」、従来の農業における課題をテクノロジーで解決する「アグリテック」などが代表的な例ですね。
今回は、このX-Techの中から「フードテック」について紹介します。
そもそもフードテックとは何か?
フードテックの定義は、「テクノロジーを駆使して、食品のデザイン・生産・選択・配達・消費における効率性や持続可能性の改善を目指す事業セクター」です。
要は、「食」と「IT」が融合することすることで、食に関する新しい価値を実現することを意味しています。
引用:農林水産省フードテック研究会中間とりまとめ
米投資会社によれば、2017年のフードテック市場への投資額は、1兆1000億円を超えたと言われており、今後は700兆円の市場規模を超えるとも言われています。
投資額の比較表では上位にアメリカ、中国、次いでインドとなっています。
日本は?というと、かなり下にいて、投資額は97億円...。
世界に大きな遅れを取っているのが分かりますね。
フードテックが注目される理由とは...
背景には2つの問題があります。
まず1つ目は、人口規模の食糧問題。
「2030年までに飢餓をゼロに」というSDGsがあるくらい、食糧不足が注目されています。
皆さんは世界の飢餓人口や日本の廃棄食料ってどのくらいだと思いますか?
2018年の調査によると、世界の飢餓人口は8億2000万人以上!9人に1人が飢餓に直面している状態です。
※2020年の飢餓人口は、7億2千万人~8億1100万人。
さらに世界中で起きてるパンデミックの影響により、2030年には約6億6千万人が飢餓状態になると推測されています。
一方、日本の廃棄食料は年間約2000万トンと言われています。これは途上国に住む人々5000万人分の1年分の食糧に当たります。
また国際連合食糧農業機構(FAO)によると、生産から消費に至るフードサプライチェーン全体で、食料の約1/3が捨てられています。
その量は、なんと1年あたり約13億トン!
そして2つ目は、労働力不足。
日本でも少子化に伴う人口減少が年々加速しており、労働力の不足が近年深刻になっています。
そこで、各業界にAIやロボットを活用することで、生産性を向上させる動きが活発化しており、生産性の観点からもフードテックは注目されています。
ここで注目のフードテック企業を紹介!
①ビヨンド・ミート(次世代食品)
フードテックの取り組みの1つに食肉の代替があります。その食肉代替の代表的なスタートアップ企業です。
大豆やえんどう豆などを使った植物性タンパク質由来の代替肉の開発を行っています。
②ベースフード(次世代食品)
1食で必要な栄養素すべてが取れる「完全栄養食品」を目指す会社です。
2016年に創業して「完全栄養食品」として最初に打ち出したのが「即席カップパスタ」で1食で1日に必要な栄養素の3分の1が摂取できるそうです。
③有限会社ゑびや
引用:『“老舗ベンチャー”ゑびや大食堂が「的中率9割」のAI事業予測をサービス化!』
このニュースはご存じの方も多いのではないでしょうか。
老舗和食屋が「来客予測AI」を使い、天気や気温、曜日や近隣の宿泊客数などをもとに毎時間ごとの来客数を予測させるという考えを導き出しました。
こうすることで、お店側はその日に用意する食材や従業員を無駄にすることがなく、さらに来客のおもてなしも充実させることができるというわけです。
この予想が見事に当たり、予測的中率がなんと90%以上!すごい的中率ですよね。
また2012年からの4年間で売上を4倍に、利益率を10倍に、さらには従業員の有給消化率も80%に達したそうです。
これからフードテックが目指す未来は...
フードテックは、次世代食品(食材の代替、昆虫食、完全栄養食)、スマート農業、無人経営、流通など様々な形があります。
ですが未だ「食の需要と供給のバランス」が解決できていません。
ある国では日々消費される食材の3分の1を廃棄しているのにも関わらず、別の国では飢餓に苦しんでいるのが現状。
食品ロスを軽減させ、その食を欲しがっている場所に届けられるシステムができてこそ、「フードテック」の到達点になるのではないでしょうか。
現在の国内はまだ黎明期であることを考えると、今後のこの領域の動きには期待していきたいですね。
参考
・食文化✕ITが面白い!!フードテックは我々にもっとも身近なIT・・・
・SDGs達成に影響も 世界の飢餓人口、コロナ禍で増加
・2020年は日本の「フードテック」元年:「食×テクノロジー」で得られる効果を解説
・市場規模は700兆円? 食のIT革命「フードテック」が注目されている理由とは
2021年12月3日
ITマネジメント事業部 矢島 大樹