カドミウムを使わない量子ドットディスプレイ実現へ!
シャープ株式会社、シャープディスプレイテクノロジー株式会社及び東京大学は2022年12月12日、
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」において、
カドミウムを含まない量子ドット(※1下記記載)でRGB画素のパターニング(※2)に成功したと発表しました。
【カドミウムとは】
カドミウムとは、亜鉛や水銀などとともに第12族元素のひとつです。
金属としては銅や銀・ニッケルなどの合金、鉄などの電気メッキ、蓄電池の電極版などに使われています。
また、人体にとっては有害で、骨がもろくなるイタイイタイ病の原因となります。
カドミウムとその化合物は、国際がん研究機関(IARC)によって発がん性物質にも分類されています。
【なぜ使われるのか】
カドミウムが使われる理由は、大きく二つあります。
一つ目は、優れた蛍光特性がある点です。
カドミウムは主に量子ドットディスプレイや高価格液晶テレビなどに使われています。
これらの機器は色鮮やかさなどを求められ作られているため、発光時の単色性が高いことなど、カドミウムの特性とマッチしています。
二つ目は、カドミウムを使用した量子ドットの省エネルギー性能にあります。
これは欧州委員会でも認められており、量子ドットを使用した色返還LEDはエネルギー効率と発色性能において相当な利点があるとの見解が述べられています。
しかし、人間への毒性は強く、国際法が強化され使用が禁止されることが決まったことが背景となり、
カドミウムフリーの量子ドットの開発に多くの企業、研究機関が力を入れてきました。
【カドミウムフリー量子ドットディスプレイへの期待】
カドミウムは上記のように毒性を持つことが大きな懸念要素でした。
しかし、カドミウムを含まない量子ドットの開発によって、量子ドットならではの優れた発光特性を毒性の心配なく生産することができます。
今後は大型テレビやディスプレイなどに展開できる可能性が高いと大きな期待が寄せられています。
デバイスを扱う者として私たちも期待しています。
※1量子ドット :液晶や有機ELに代わる次世代ディスプレイ技術として注目を集めている。
※2パターニング:ガラスやフィルムなどの基盤の上に、画素を形成・配列すること。
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★前回の記事↓
【注目ITトレンド】エッジコンピューティング
参考サイト・ニュース
シャープ株式会社:Cdフリー量子ドットで、 RGB画素のパターニングに成功
大阪大学:カドミウムの発光特性
厚生労働省:カドミウムの特徴
PRTIMES:欧州委員会の見解
2023年1月12日
ITマネジメント事業部 深代美和 阿部響 柿沼佑一